電通と博報堂は何をしているのか 著者:中川淳一郎

電通と博報堂は何をしているのか  著者:中川淳一郎
この記事の筆者:早川朋孝
電通と博報堂は何をしているのか  著者:中川淳一郎

新入社員が自殺するという痛ましい事故が起きた電通。まだちらほらと新聞でこの問題を目にする。この渦中で「電通と博報堂は何をしているのか」が発売された。著者は「ウェブはバカと暇人のもの」で有名な中川淳一郎氏。元は博報堂の社員とのことで広告代理店の内情に詳しいのだろう。

電通も博報堂もどちらも大きな会社なので仕事で付き合いのある人は多いだろう。私も何度かこれらの会社の人と一緒に仕事をしたことがある。他者と一緒に仕事をすると、「この人はどういう考えでこういう行動をとるのだろう?」と思うことがあるが、その際抱いた疑問に本書は見事に答えてくれた。私が広告代理店の人と一緒に仕事して特に強く感じたのは以下の点だ。

  • 会議が長い
  • 顧客先に大所帯でぞろぞろ行く

会議が長い

あるウェブサイトの案件の打ち合わせを某広告代理店の人たちとした時のことだ。仕様を詳細まで詰めるとのことで、事前に長丁場が予想された。いざ会議が始まったら、、何も決まらないのだ。結局「エンドユーザーの回答待ち」というお決まりのパターンで詳細が全然つまらない。どうしようか、どうしようか、と何も決まらないうちに時間がどんどん過ぎて何も決まらないのに長い会議になった。こんなことが何度があった。詳細や方針が決まって会議が長くなるならまだいいのだが。これに関して、本書では見出しの一つに「会議は続くよいつまでも」というものがあり、以下のような記述があった。

代理店の仕事は基本は考えることが中心のため、何が100点なのか分からないのだ。答えがないだけに、スタッフが雁首をそろえて3時間も4時間も会議を続けるのである。結論がどうなろうが「全員で考え抜いたこと」が重要だと考えるため、とにかく会議の人数は多くなり、時間も長くなる。
p36より

そうなんだ、そういうことだったのかと思うが、そういう長い会議は勝手に社員だけでやってもらうとして、外注先まで巻き込まないで欲しいものだ。私はこの人たちの会議はいつも長いなと気づいてからは、次の打ち合わせが○○時からあると事前に伝えておき、時間がきたら問答無用で退散というようにしている。

顧客先に大所帯でぞろぞろ行く

これも何度も経験したことだ。顧客先に打ち合わせに行くのに、某広告代理店の社員がすんごい大所帯でくる。やっぱりいつも。なぜこんなに人数をかけるのだろうか?というのが素直な疑問だった。どうせ大人数で行っても喋る人は限られる。それなのになぜかいつも大所帯。オフィスで仕事してるほうがよっぽどいいと思うのだが、本書によると顧客への忠誠を示すためらしい。なるほど、そうでしたか。

社外で何かをする時も大人数でやって来るものだ。どうも、電通・博報堂は「大人数で来れば客に忠誠心を見せられる」と考えている節があるようなのだ。 p39より

なんというか、やや前時代的なものを感じるが、まさにそういう人たちらしい。本の帯には彼らは単なるモーレツサラリーマンであり社畜である」と書いてあり、その核心と思うような事例がp48に書かれている。クライアントが横暴なのだ。

ここまで代理店の業務に無駄なことが多く、とにかくサービスをする「社畜」であることを書いてきたが、その大本となるクライアント企業はどうなのか。残念ながらここにもちょっと「アレ」な人は案外多い。頭が悪いということではなく、社内の論理が世間の論理から乖離しているのだ。とにかく社内の上の顔色を窺い、怒られないようにする。そのための下準備をするのが広告代理店ということになっている。それでいて、やたらとCMでは海外ロケをしたがり、現地では広告代理店の営業に接待を任せ、観光をしたがったりする。

この引用の先にすごく面白いエピソードが書かれているので、詳細を知りたい人はぜひ買って読んでみて欲しい。私はそこまで深い付き合いではないが、某広告代理店と一緒に仕事をして抱いていた疑問が本書を読むことで見事に解けたのである。本書は以下のような人なら読む価値があると思う。

  • 広告代理店に就職したい人、業界を知りたい人
  • すでに取引先として電通、博報堂などと付き合いがあって振り回されている人

長時間労働は是正されるか

新入社員の自殺問題で注目を浴びた電通の長時間労働についてはこう思う。「長時間労働は日本からなくならない」と。というのもクライアントの要望を何でも聞く電通の向こうにたくさんのクライアント企業がいて、そのさらに向こうに一般消費者がいる。我々は日本企業の素晴らしい製品やサービスに慣れきっていてそれを当然だと思っている。こういう意識がある限り、なくならないだろうなぁ。ヤマト運輸がアマゾンの取り扱いを減らすと報道されているが、「何でもやります」という姿勢ではなくちゃんと断る意識がもっと広がればと思う。

もし「何でもやります」という姿勢をとるなら、それに見合うフィーを要求するべき。日本の消費者は過剰サービスに慣れてる一方、企業はサービス過剰サービスをし過ぎてる。そこには互いへの尊敬や敬意が生まれない。

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